体外離脱 (続・『見ている(視ている)とはどういう状態か』)

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Post時間:2015-04-01 14:35:58

 

(視覚に関する部分が予定外に長くなったため、それに続く体外離脱のトピックをここに移転していきます。)オリジナル第一投稿日_2014-09-09


ここから脳について書かれた本で体外離脱に触れられた箇所をいくつか引用していきます。 

サンドラ&マシュー・ブレイクスリー『脳の中の身体地図』訳:小松淳子(2007)p188~

1.up_200mm_p188_189.png
2.up_220mm_p190_191.png
3.up_220mm_p192_193.png
4.up_220_p194_195.png

※ 文中に出てくるオラフ・ブランケ原論文は以下。①'ドッペルゲンガーの正体'の下敷きとなっている論文。②’体外離脱を起こす実験’の下敷きと覚しき論文。
[TPJ(exlink.gif側頭頭頂接合部)への電気刺激で[shadow](”影”)が出現するリポート。" Induction of an illusory shadow person "2006年、ネイチャー;
exlink.gifhttps://hpenlaboratory.uchicago.edu/sites/caciopponeurolab.uchicago.edu/files/uploads/Ortigue_Nature%202006.pdf 2014年8月25日閲覧

図1.2Olaf_Blanke_2006_shadow_c.jpg
Olaf_Blanke_2006_shadow_d.jpg

② ハイディという名前は確認していないが、電極刺激による手足の変成を報告したオラフ最初のネイチャー論文。2002年。  
Olaf Blanke, Stéphanie Ortigue,Theodor Landis, Margitta Seeck ”Stimulating illusory own-body perceptions”;

exlink.gifhttps://hpenlaboratory.uchicago.edu/sites/caciopponeurolab.uchicago.edu/files/uploads/Ortigue_Nature%202002.pdf 2014年8月25日閲覧
exlink.gif
exlink.gif
角回とTJPの関係exlink.gifTPJ.jpgクリックで拡大
※ 文ラスト「何も映し出さない斑点を...イメージが埋める」についてはオリバーサックスの動画が面白い。

exlink.gif「幻覚が解き明かす人間のマインド」(2/2は関連動画欄の一番上)

脳:体性感覚野・一次運動野・補足運動野・運動前野の位置。
089bae05.gif

題名:2.『脳の中の身体地図』 あとがき                                      Post時間:2015-04-01 14:38:00

 

サンドラ・ブレイクスルー、マシュー・ブレイクスルー著
『脳の中の身体』 訳:小松淳子 インターシフト(2009年) あとがき (オリジナル第一投稿日_2015-02-05)
*文中に出てくる”EBA” 同書p340[用語集] EBA (Extrastriate Body Area )- 人体と身体部位のイメージに反応する脳領域。
"TPJ"(側頭頭頂接合部(Temporo-parietal junction)は縁上回+角回(下”頭頂”小葉)下部(側頭葉と接している)と、
上側頭回後部(縁上回/角回と接する側頭葉の一部)にまたがる脳領域(解剖学的分類ではなく機能的分類)。
参考図exlink.gifhttp://networkbrain.web.fc2.com/body/brain.html Figure 1.左図改変

EBA_out.jpg

 以下 サンドラ・ブレイクスルー、マシュー・ブレイクスルー著 『脳の中の身体』 訳:小松淳子 インターシフト(2009年) あとがき

                                                  (体外離脱に触れている部分を含む全文)


up_1.pngup_2.pngup_3.pngup_4.pngup_5.png

※ブランケの報告でもイアコボーニの実験でも意識変成が生じるのは”右脳”TPJへの刺激だった。
 左脳には感覚性言語野(exlink.gifウェルニッケ野_音声言語の認識)があり、TPJと領域が重なっている事が関係あるのではないか。
 (参加者の言語野が全て左半球優位と仮定した場合。)
巻頭投稿のオラフ・ブランケの報告では、言語野(ウェルニッケ野:TPJと重なる)を刺激した時、『私』の位置認識はそのままだが、
(おそらく)言語野のない右半球の角回(TPJと重なる領域をもつ_前投稿の図参照)への刺激を受けると『私』は離脱した側に意識が移行している。この違いは重要。

*(2015.2.15追記)グッデイル&ミルナー『もうひとつの視覚』(新曜社、2004)」に上記の左右非対称に関する直感と同様の可能性が示されていました。
(p95)
「相貌失認や地誌的失認は、左半球よりも右半球の腹側経路の損傷によって生じることが多い。,,
顔や場所の写真が提示されると、典型的には右半球の顔領域と場所領域が、左半球のそれらに対応した領域よりも強く活性化される。
腹側経路での処理の大部分がなぜ右半球に集中しているのかは、よくわかっていない。
ひとつの可能性として、左半球ではそれと対応した領域の多くが、別の仕事(とりわけ発話や言語理解に関係した仕事)をしているという説明が考えられる。
同一の脳領域で言語と視知覚を同時にこなすのは、不可能なのかもしれない。」
※1 
この仮説(言語野の有無で刺激による活性化の違いが起きる)を検証するには、
左利きに2割存在するという右脳言語野の持ち主をfMRI検査し、左脳の活性化が勝っている事を確認すればよく、
引用は10年前(2004)の本なので結論はもうでてる(簡単な確認ですから)と思うのですが探せていません。

※2 オラフ・ブランケ(2002)の右角回への電気刺激による体外離脱誘発のケースでは、
その女性患者が右利き(=言語野は左半球)であることが論文冒頭に明記されています。
(2015.4.19追記)
 

                  Post時間:2015-04-01 14:46:47
 
 

『新・脳と心の地形図 』リタ・カーター(2012)藤井留美/訳 原書房に、体外離脱が身体信号の減衰(または断絶)によって引き起こされるという見解が記載されていました。
種々の知覚、-視覚や聴覚・味覚・痛覚など-に対する脳学的解説を短くまとめたコラムの最後に「第六感」の解説として載せられていた文章です。
(オリジナル第一投稿日_2015-03-31)

p183
    "第六感*(※太字は引用者)
  『手足がいまどの位置にあるかを知り、姿勢のバランスを保つ身体感覚、それが固有知覚である。
   これには、複数の感覚刺激が総合的に関わっている。
   皮膚や筋肉、腱からの触覚や圧力、 脳からの視覚や運動情報、それに内耳からのバランスデータ。
   これらがひとつになったものは、ほとんど第六感と呼べるものだ。
   固有知覚には脳のさまざまな領域が動員されるので、完全に失われることはめったにない。
   それでも脳に傷を負って固有知覚が損なわれ、自分の身体感覚がなくなってしまう人もいる。
   また、瞑想状態に入ると、意識的な脳からの固有知覚の情報が切り離され現実感が失われた、あるいは自分の体が浮かんでいる感覚が引き起こされる。
   魂が肉体から離脱して宙をさまよったという、体外離脱体験は、おそらく一時的に固有知覚が失われた状態だと思われ、
   身体意識と、「いまここにいる」感覚を融合する脳の領域を阻害することで、人工的に再現できる。』


*引用したコラムには原注や訳注が付いていないためどのような研究・論文に基づいてコラムが執筆されたかは不明です。 
exlink.gifp183_100.jpg元文
◎「人工的な再現」とあるのは、TJP(頭頂側頭接合部)への電極刺激によって体外離脱が誘発されたオラフの論文でしょう。(本トピック2-②,)
◎瞑想と体外離脱:『瞑想と脳科学』の参考論文の中に、コラム執筆者が参照した研究が含まれているのかもしれません。
◎「固有知覚の切断が体外離脱を誘発」の前に”おそらく”とあるのは、少なくとも(2011年時点で)明確に実証した研究がない事を示しています。
 これについてはこれから検討していきます。(exlink.gifpnasサイト”out-of-body"検索) (私は固有覚より触覚の切断(減衰)の方が主因だと思ってます)

◎瞑想と体外離脱との関係:チベット仏教の代表者ダライ・ラマ14世が脳神経学者リチャード・デビッドソと共同で始めた「精神と生命会議」(exlink.gif関連記事2003)と
 その会議から派生した「精神と生命研究所」(exlink.gifHP)の活動によってアメリカで盛んに研究されています。 exlink.gif[8人のチベット仏教修行者の脳を計測した論文]2004
 そういった趨勢から瞑想を認知療法に取り入れたマインドフルネスという新たな実践なども行われるようになっています。
  体外離脱に話を絞れば、永沢哲がチベット仏教の修行における”意識の転移[ポワ]”(体外離脱)について書いています。exlink.gif「いのちとこころ チベット仏教の意識―生命論」永沢哲
 上記リポートの註で永沢哲氏は、体外離脱時の計測が行われた、と記しています。残念ながら論文名は明らかにされていません。



(2007年「脳の中の身体地図」(前記事)でブレイクスリーは「exlink.gifフェルト・センス(触覚はsense of touch)と漠然とした言い方で、
その感覚が血流障害などで喪失すると体外浮遊経験が起きる可能性がある、との仮説を示していました)
オラフ・ブランケのTJP刺激による体外離脱の報告は、その後、カメラとゴーグルを利用したシミュレーション研究になり、実際の体外離脱時の脳機能画像研究報告にはなっていません。
fMRI検査中に、被験者が偶然体外離脱を(磁気刺激なしの自然な状態で)起こすのを期待するというのでは研究スケジュールが立たず予算もでないでしょう。
(fMRIを使う研究にそれなりの金と人材が必要な事はイアコボーニも『ミラーニューロンの発見』で書いています)
ただ、別の研究で被験者がfMRIに入っている時被験者が偏頭痛を起こしたため偶然に偏頭痛の血流変化が世界で初めて測定されたという例もあります。
   (マルコ・イアコボーニ『ミラー・ニューロンの発見』p230~)
オラフ・ブランケ2002年の体外離脱論文自体、本来、てんかん発作を引き起こす焦点部位を同定するための術前検査で
側頭葉(ここの異常な電気信号の頻発がてんかん発作を引き起こす)の色々な場所をexlink.gif硬膜下電極で電気刺激している最中に偶然、OBE(体外離脱)が誘発されたため、
それを報告した論文です。脳を直接刺激する侵襲的な検査なので研究目的でボランティアを募って実験する事は倫理上人間に対してはできません。
猿に電極刺激しても彼(彼女)は「いま、天井から自分の体を見下ろしてます」と報告してくれません。[/size]

*[第六感] 原文でどういう単語が使われているのかは知りませんが、オリバー・サックス『妻を帽子とまちがえた男』で「6番目の感覚」として説明されている部分は同一の内容を指していると思われます。
exlink.gifシェリントンが「人間にそなわるかくれた感覚」と呼んだ六番目の感覚,,,とは、
からだの可動部(筋肉・腱・関節)から伝えられる、連続的ではあるが意識されない感覚の流れのことである。
からだの位置、緊張、動きが、この六番目の感覚によってたえず感知され修正されるのである。
しかし、それは無意識のうちに自動的におこなわれるので、われわれは気づかないでいる。」

オリバー・サックス『妻を帽子とまちがえた男』(ハヤカワ文庫版_訳:高見逸郎・金沢泰子.p96)

 

 題名:『瞑想する脳科学』 永沢哲(2011)講談社選書メチエ                              Post時間:2015-04-01 19:20:40

この本で体外離脱について直接 触れられている箇所は下の一行だけです。

さらに、目が覚めている時も、睡眠中も、自覚をたもつ「光明」や、体外離脱の体験をもたらす「転移」の修行に進む。(p179)


この本は、ダライ・ラマ14世(現在のダライ・ラマ)の全面的な協力によって
チベット仏教の高位修行者たちの瞑想中の脳を、脳神経学者たちが測定したことについての記述を中心に、神経宗教学(神経神学)を巡って書かれている本です。
著者は脳学者ではなく、チベット仏教を専門とする宗教人類学者です。
 引用した箇所は≪脈管と風の修行≫について書かれた章の中の一文です。



永沢哲:意識の転移(ポワ)の修行について書かれている文章。
http://kokoro.kyoto-u.ac.jp/jp/kokoronomirai/kokoro_vol.10_16-19.pdf


8人のチベット仏教修行者の脳を計測した論文。
http://www.pnas.org/content/101/46/16369.full.pdf+html

 

題名: (追加) out of body  2014年度論文      Post時間:2015-08-20 1

"Voluntary out-of-body experience: an fMRI study" 

  Andra M. Smith,Claude Messier  School of Psychology, University of Ottawa, Ottawa, ON, Canada

http://journal.frontiersin.org/article/10.3389/fnhum.2014.00070/full

 


論文内でふれられている主な先行論文 (より詳細は上記論文末尾)

*"Mechanisms underlying embodiment, disembodiment and loss of embodiment" (2008)Melita J. Giummarra ,Stephen J. Gibson ,Nellie Georgiou-Karistianis 他

   [http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0149763407000759 ] Abstract

*The body in the brain revisited.  (2010)     Giovanni Berlucchi,Salvatore M. Aglioti .  Exp. Brain Res. 200, 25–35

   [http://link.springer.com/article/10.1007%2Fs00221-009-1970-7 ]   Abstract

*"Embodiment, ownership and disownership" (2011)      Frédérique de Vignemont

  [http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1053810010001704? ]   Abstract

*”Multisensory brain mechanisms of bodily self-consciousness.” (2012)  olad Blanke (Blanke,O) 

 [http://www.nature.com/nrn/journal/v13/n8/full/nrn3292.html  ]  Abstract

*Bodily illusions in health and disease: Physiological and clinical perspectives and the concept of a cortical ‘body matrix’  (2012)    

                                   G. Lorimer Moseley, Alberto Gallace, Charles Spence

 [http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0149763411000649?via%3Dihub ]  Abstract

 

 

 

 

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最終更新:2015年08月20日 16:00